■創設者から皆様へのご挨拶
弊社団に興味をお持ち頂き、誠に有難うございます。以下にて私どもの問題意識を述べさせて頂き、ご挨拶に代えさせて頂きたく存じます。
かつて生まれた家庭の貧富の差にかかわらず、努力次第で人生を豊かにして行ける時代が日本にもありました。
現在公立中の補習教師もしておりますが、補習塾に行く事の出来ない子達は、いくら頑張っても、基礎を理解するのが難しい程教科書は薄く、教師の個人指導も諸事情で極めて限定的と生徒から聞いています。九九が出来なかったり、漢字の多い本を理解するのが難しい子も少なくありません。
自分が劣っているからと自己卑下したり、親兄弟も塾に行けていなかったから、自分だけ行かせてくれと言えない子もいて、十四・五歳の子達の顔には一種の諦観が現れており、社会階層の固定化を感ぜずにはいられません。
他方子ども食堂等の活動では二百家庭以上に八千食以上のご飯を食べて貰っていますが、中でも一人親家庭や障害児家庭の置かれた環境の厳しさは、とても自助努力で乗り切れるものでは無い事、そしてその他の子育て家庭も共稼ぎでギリギリの努力で中間層に留まっている事を教えられています。
この国で、何かに困窮している事は恥ずべき事で、困窮家庭は懸命にそれを隠して、他人から見え難い食費や教育費を削って外見を装い、信頼関係が無いと簡単には助けも求めて貰えない事も知り、地域ボランティア活動だから出来る領域の存在も学びました。
相対的貧困は、単に年間の可処分所得の少なさを示していますが、貧困の実態は、所得よりも数世代にまたがり生まれた資産格差にこそ大きく現れるのではないでしょうか。所得格差を数年是正しても、資産格差の是正は極めて困難と考えます。
資産には土地や家屋のような目に見える物と、目には見えない無形資産があります。努力は報われると信じ、何事もやり抜く簡単には折れない心は、
非認知的能力と呼ばれますが、これも本来祖父母両親から教え伝えられ、相続すべき人生の無形資産ではないでしょうか。(この非認知的能力の世代間相続の断裂が、貧困の連鎖の底流にあると思います。)
資産格差より所得格差に議論が偏り、資産格差の中でも無形資産で決定的なハンディキャップを持つ子どもと若い保護者が沢山生まれています。資産格差が大きすぎて自助努力では挽回出来ないものの自己責任を問うのは、アンフェアではないでしょうか。
例えば教育は支出というよりも投資というべき金額水準ですし、支出の見返りの収入を短期に望む事は出来ません。結果として資産格差が教育投資格差を生んでいます。
有形固定資産は、固定資産税や相続税で課税され、一定率子育て困窮家庭への再配分も行われています。しかし特許や著作権等を除き、生き抜く力である非認知的能力のような無形資産の相続は課税再配分される仕組みがありません。
このまま有形無形の資産格差を看過していると、明るい将来像を持てない子達が親になる時少子化に歯止めをかけてくれる事に期待するのには無理があり、努力の価値を肯定できない成人が増えていく事に、日本と言う国の根腐れを危惧しています。
食材の宅配で、隠されている子育て家庭の飢えを凌げるようにし、毎日の食事付き学習環境の提供と毎週の学習指導で、保護者と学校だけでは難しくなった子ども達への生き抜く力の相続を手助けする事は、社会に恵まれ、地域社会に育てて貰った私達の責務と認識して、活動しています。
納税に基づく行政支援だけでは、救えない子ども達と子育て家庭が沢山隠れています。どうか、社会に恵まれた方々、同じ問題意識を共有して下さる方々、社会的成功を収められた方々のご理解とご協力を、心よりお願い申し上げます。
最後までお読み頂き、有難うございました。
感謝を込めて。
公益社団法人東京子ども子育て応援団
創設者・事務局長 河野 司
*一人親家庭の半数以上が、親一人子一人ならば年間可処分所得173万円以下、親一人子二人ならば244万円以下の生活をしており、これは生活保護を受けた場合の所得よりも低い水準です。